平成の八つ墓村・山口県周南市金峰の「村八分殺人」重要参考人の63歳男が身柄確保

つけびして煙喜ぶ田舎者

獣道で発見・63歳男を逮捕…隣家79歳女性への殺人、放火で
【山口連続殺人】行方不明の男、現場付近の山中で確保 – MSN産経ニュース

2013年7月21日から22日にかけて、山口県周南市の山奥にある小さな集落で、一晩に5人もの住民が次々撲殺され、自宅が放火されるなどする悲惨な事件が起きた。事件後行方をくらませていた、集落に住む63歳の男が重要参考人として警察がその行方を追っていたが、26日になって集落に近い山の中に潜伏していた男の身柄が確保される。

犯人は保見光成(ほみ・こうせい)容疑者(63)。殺人及び非現住建造物等放火容疑。4世帯5人殺害の容疑を全面的に認めている。

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「平成の八つ墓村」「津山事件の再来か」だなんて言われる今回の事件は、その舞台が人口僅か8世帯14人という周南市金峰(みたけ)の郷地区という狭い集落内で起きた事、犯行に及んだ63歳の男が集落内で村八分にされ孤立していた事が特徴的だ。狭い集落の人間関係の中で積年の恨みが爆発して村人を次々殺害するという結末。

保見容疑者の自宅に事件の2年前から張り出されたという「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者 かつを」と書かれた謎のポエムは当初は犯行を仄めかしたものと報じられたが、後に「噂の種をバラ撒いて喜ぶ村の住人」を非難する内容ではないのか、という別の解釈も出てきている。

自宅に変なオブジェや置物が多数置かれていて妙で電波を発しているのを見ると、ちょっと個性の強そうな人間なのはひと目で分かるが、村人に村おこしを提案してそっぽを向かれたり、最初から浮いた存在になっていたらしい。

保見容疑者は集落で一番若い人間だった事から草刈りなど村の雑用係を次々押し付けられるようになり、積極的に手伝ってはいたものの村人には感謝もされず、逆に馬鹿にされるようになる。事件の10年前、酒の席で今回の被害者の一人になった人物に刃物で刺され怪我を負っている。

犬

この件を契機に保見容疑者は集落から完全に孤立して、飼っていたゴールデンレトリーバーだけが唯一の理解者という状態になっていたのだ。

周南市金峰

■被害状況
・K宅 妻(73)が殺害。夫は旅行中で被害を免れる。過去に農薬散布を巡るトラブル。10年程前の不審火以降、夫妻は被害を恐れて家を空ける事のないよう旅行も別々にしていた。夫は保見容疑者に「殺されるかも」と周囲に不安を漏らす。
・I宅 男性(80)が殺害。
・Y宅 女性(79)が殺害。保見宅の南隣。自宅は放火され全焼。
・S宅 夫(71)、妻(72)ともに殺害。自宅は放火され全焼。

■周南市金峰地区について
徳山市街地から北へ約20キロ、車で45分の山中にある。1970年代から過疎化が進行、郷地区は8世帯14人が生活していた。戦後期まではニッケル鉱山があり、鉱山関係の生活者もいた。現在も山中には鉱山時代の横穴や使われていない獣道が多く残され、犯行後の保見容疑者が潜伏していたとみられる。

■保見光成容疑者(かつを)年表
1950年  0歳 山口県都濃郡鹿野町(現・周南市)金峰郷地区の農林業一家に生まれる。
1965年 15歳 中学卒業後上京。工務店に就職し左官職人として修行を始める。
          川崎市多摩区のアパートで生活
          (川崎以前に品川区旗の台のアパートで暮らしていたとの報道あり)
1994年 44歳 両親の介護のため川崎を離れ山口の実家に帰る(一部1996年との報道もある)
          職人の腕を振るって自宅改築。両親のためにバリアフリー仕様にする
          集落一番の若手であった事から雑用係などを次々押し付けられるようになる
2002年 52歳 母親死去
2003年頃    酒の席で喧嘩になり事件の被害者の一人から刃物で胸を刺され刑事事件になる。
          加害者は逮捕され罰金刑を受ける。
          保見容疑者所有の草刈機が燃やされるトラブル。
2003年6月   K宅の倉庫で不審火。これ以降K夫婦は自宅警備の為旅行も別々に
2006年 56歳 父親死去。両親死後から保見容疑者の奇行が目立ち周囲に避けられるようになる。
          変なオブジェ多数設置。回覧板受け取り拒否。
          以後、保見宅と周囲との関係断絶。玄関先の張り紙が本人の意志を知る唯一の手段。
          保見宅の飼い犬の糞の処理を巡るトラブル(時期不明)
          K宅との農薬散布を巡るトラブル「犬を殺す気か」(時期不明)
2011年 60歳 地元警察に相談「悪口を言われ集落で孤立している」
          玄関先に張り紙「つけびして煙り喜ぶ田舎者」
2013年 62歳 7月21日事件発生。4世帯5人が撲殺、うち2軒が放火され全焼。26日身柄確保。


大きな地図で見る

周南市金峰の郷地区がどこにあるのか地図で確認してみると、こんな隔絶された山の中にあるんですね。徳山の市街地からは20キロ以上離れていて、観光客がとても寄り付くような場所ではない。戦前戦後期に辿るとこの周辺は金峰鉱山というニッケル鉱山があり、廃道と化した山道を辿ると鉱山時代の横穴がいくつも残っている。

このような田舎の陰湿な人間関係というのは正直どこでもあるような話なのだが、両親が死んだ時点で家を出て行くなどしていればこんな事件は起きて居なかったのではなかろうか、村八分で人殺しをやる状況に追い詰められるまで、過疎地帯の山奥にある実家を守る必要はあったのだろうか。

真面目だけど融通が効かない気質の人間だったかも知れんな。どれだけ田舎独特の陰険な嫌がらせがあったとは言え、5人殺害という結果は死刑を免れない重大な罪である。逃走中に山の中で自殺を試みるも「死のうと思ったが死にきれなかった」と言って発見した警察に呆気無く白旗を挙げ捕まったかつを63歳。

今後事件の続報が出次第、当ページにも情報を追加していく予定だ。


※追記:山口放送の報道(2013/07/26)

・住民女性の証言、約10年前の酒の席での刺傷事件について「ちょっと酒を飲んだ席での事ですからね、ちょっと(刃物が)当たったくらいじゃないですか?」「仲が悪いというのはどこにもありますよ、気が合う合わないというのは誰でもあるじゃないですか。だから、些細な事でしょうね」

・かつをの友人の証言、約10年前にあった農機具を巡るトラブルについて「田んぼの畦道を刈るのに機械を使って、油代も全部自分ちで出させて、本人が畦に機械を忘れて帰ったら、次の日に(別の村人が)草と一緒に(機械を)焼いてしまった。後日『あら、貴方のものだったの?』という感じで、まあいじめというか、いろんな事があったみたいですけど」

・飼い犬のゴールデンレトリーバーは周南市内の動物愛護団体に引き取られた。しかし愛護団体によれば「保見容疑者の逮捕直後に心臓発作で死んだ」とある。


凶暴さが垣間見える「かつを」の一面

・川崎時代の知人「(住んでいた当時)みんなおかしいと言っていた。うちの子どもは、いきなりほっぽり出された。小学校の時、投げ飛ばされた。いきなり怒り出したことがあった」

・報道「犬のふんを片付けるよう注意した住民に対し『血が見たいのか』とすごむ」

・報道「主婦の井戸端会議に割り込んできて『俺は薬を飲んでいるのだから、10人や20人殺したって罪にならない』と脅した」

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)

なおこの事件とよく比較される「津山事件(三十人殺し)」だが、犯人だった都井睦雄は犯行当時21歳(当時は数え年で22歳)、当時不治の病だった結核を患っていて兵役にも不合格、村人からも避けられ、夜這いで関係を持っていた集落の女性達からも逃げられ、人生に絶望した上での犯行だった。

今回の事件は犯人とみられる重要参考人の男が63歳でかなり年齢層も違うし、犠牲者となった5人も全員70~80代の高齢者である。閉塞感しか存在しない限界集落の中で起きた救いようのない事件であり、かつを予備軍のような人物はごまんといるだろうし、今後もこのような出来事がどこかで起きるかも知れない。

この事件は、日本独特の高齢化社会がもたらした悲劇だ。

限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)

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